EXPECTOLOGY(期待学)
今月の初め、あるセミナーに参加しました。そこで採り上げられていたテーマが「EXPECTOLOGY(期待学)」というものでした。
講師は、トライポッド・デザインの代表であり、東京大学大学院工学系研究科の特任教授の中川聰さんという方でした。
セミナーの前半はワークショップ形式で、「感性の記憶」というテーマで、左手で図を描いたり、壁のスクリーンに一瞬表示された絵を思い出して描いたり。なかなか楽しかったのですが、我ながら短期記憶能力の衰えを実感しました(^^;)
そこから、感性つながりで期待学の説明へ。期待学を一言でいうと、製品の魅力をユーザーの期待や不安という切り口で解釈しようという試みだと思います。
例えば、製品がそれなりによくできていても、ユーザーの期待がそれ以上だと、結果的に生まれる感情は「期待はずれ」となり、その製品は魅力的だとは思ってもらえません。逆に最初ユーザーが不安を感じている状態だった場合は、製品がそこそこのレベルでも不安が払拭されユーザーは満足するでしょう。このように、製品に接する前の人の印象「期待」「不安」と製品に触れた後に生まれる感情「満足」「失望」の関係をまとめたものが期待学ということだと思います。
製品とユーザーの関係の捉え方には様々ありますが、こういう捉え方は初めて聞きました。ユーザーにとってもデザイナーにとってもとても感覚的で体系的に説明しづらいものが、とてもスッキリ捉えられるような気がします。あるデザイナーにとっては、自分が何をどういう基準でデザインしているのかを見直すきっかけになるかもしれません。
一方で、期待学の考え方に基づいて何かをデザインするのはとても難しそうです。例えば、ユーザーの期待を越えた感動を狙ってデザインするためには何をすればいいのかを期待学が教えてくれるかというと、そういうわけではなさそうです。
ネットを調べてみたら日経ビジネスONLINEで2010年に連載『エクスペクトロジー(期待学)が生む上質なモノづくり』があったようです。ご興味のある方はどうぞ(全部読むには会員登録(無料)が必要のようです)。