観察の練習

作成者: hagimoto
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テスト会場で行われるユーザビリティテストも、実際の現場で行われるエスノグラフィーや行動観察も、基本は”観察すること”にあります。

ユーザビリティテストの場合、機器を操作する被験者のつまずきに着目して観察することになりますが、あまりそこだけに固執してしまうと、その他の興味深い事象を見過ごしてしまう可能性があります。

エスノグラフィーや行動観察は、あまり明確な観点を持たずに観察を始めるものだと思いますが、それだけに、意識しないと何もかも見過ごしてしまうし、意識し過ぎると全ての事象を追求していかなければならなくなります。

“いい観察”とは何かを規定するのは難しそうですが、広く全体に目を配る、その中から気になる事象を見つける、特定の事象に注目する、といった異なる意識を自在に切り替えられると、目的に合った、しかも収穫の多い観察ができるのではないでしょうか。つまり、観察というのは意外と難しいということです。

そう考えると、日頃から人を観察する習慣をつけるというのは、いい観察者となるための基礎トレーニングとしてきっと役に立つでしょう。ありがたいことに、町に出れば観察対象はいくらでもいます。「私は人間観察が好きです」という人の中には、たまたま見かけた人の性格や人間関係を想像したり、その人を主人公にした物語を作るという人がいるようです。これも悪くはないのですが、ユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンス分野の場合は、もう少し客観性のある部分、つまり発言や振る舞い、表情、行動などをきっちりと把握し、それがその人の心の状態(理解、納得、満足など)とどう結びついているかを想像するのがいいと思います。

先日、ある定食屋に入りました。ここのカウンター席は、向かい側に座った人との間にちょっとした仕切りがあって、相手の顔は見えないのですが手元はよく見える構造になっています。相手に気兼ねすることなく観察し放題です(^^;)。

定食屋の向かいの席の人を観察する

この時の向かいの人のメニューは冷汁。鯵の身とご飯を冷たい汁に入れて食べるものでした。

  • 彼女はご飯を全部一気に汁に入れずに、一口分ずつレンゲで入れていました。そして、ご飯を汁に入れずに食べることもあり、このときは箸を使っていました(汁に浸したご飯と白いご飯を両方食べたかった?でも、道具を使い分けるのはなぜ?)
  • 冷汁は、ご飯と具と汁を一緒に口に入れるものかと思うのですが、この人はレンゲですくったあと丼の縁を使ってレンゲから汁を捨ててご飯と具だけを食べているようでした(汁の味が濃かった?)
  • 鯵は血合いの部分は残していました(血合いの生臭さが苦手?)
  • キャベツの千切りは、最初はまったく手を付けなかったので残すのかと思ったら、最後の方で一気に食べていました(生野菜はご飯と一緒に食べない派?お腹いっぱいになったら残そうと思っていた?)
  • 食事の途中で何度か水も飲んでいました(料理の味が濃かった?)
  • 彼女はiPhoneを持っていたのですが、食事の前半はテーブルに置いたままで、後半になって見始めました(見るなら最初から見そうなものなのになぜ?)
  • 途中、iPhoneをテーブルに置くときは画面を下にして伏せるように置きました。この時、画面は表示されたまま(人に画面を見られたくない?表示された画面をテーブルにくっつけることに抵抗はない?)
  • 1度、お盆の上のご飯茶碗の横にiPhoneを置いたことがありました (お盆の上=食べ物を置く領域という意識はない?なぜそのときに限って置く場所を変えた?)

まあこんな感じです。なお、みなさんがどこかで観察の練習をされて相手の方に不審がられても弊社は責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください(^^;)。