行動観察

作成者: hagimoto
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最近流行りの調査手法で、エスノグラフィーや行動観察というものがあります。細かい定義はさておいて、要はユーザーが実際に生活している場に入り込んでその行動を観察し、そこから潜在的なニーズを発見する、というものです。

このような手法の面白さや意義を考える上でヒントになりそうな事例を思いつきました。これは私自身の行動についてなので、実際には観察したわけではありませが、もし誰かが私の行動を観察しインタビューすれば、当然得られるはずのものです。

私は目が悪く、メガネと1日使い捨てコンタクトレンズを使用しており、裸眼で過ごすのは就寝時ぐらい。自宅で過ごす時はだいたいメガネをかけ、外出時はコンタクトを装着しています。コンタクトはあまり長時間装着しない方がいいそうなので、帰宅したらコンタクトを外してメガネに変えます。

私は長髪で、ゴムひもを使って髪の毛を後ろで束ねるヘアスタイルです。髪の毛をほどくことは、やはり就寝時ぐらいです。朝起きたばかりの時はとりあえず髪の毛がじゃまにならないようにしばりますが、外出時はブラッシングをしてもうちょっと丁寧にしばり直します。髪の毛に関しては、帰宅したあとも就寝までそのままの状態です。

私は、以前海外旅行に行くとき飛行機の中で周りを気にせず眠れるように耳栓を購入しました。実際には私の場合耳栓の有無と寝付きのよさはほとんど関係がなかったようなのですが、気分的には耳栓をした方がしっかり寝られる気がして、自宅でもごくまれに耳栓をして寝ることがあります。

我が家の洗面台の棚の一段には、使い捨てコンタクトのストックが常に置かれています。そして別の一段は外したメガネを置いておくための場所が確保されています。と言うのは、コンタクトレンズを装着する時は鏡が必要で、装着前には必ず手を洗うので、洗面台=コンタクトの装着場所なのです。メガネはコンタクトを装着する直前に外すので、そのまま洗面台の棚に置きます。

メガネ置き場は、家の中に2か所あります。1か所目は枕元のメガネケース。就寝時にはここにメガネが入れられています。朝起きてから外出するまではメガネをかけた状態。外出中はコンタクトを装着しているので、メガネは自宅の洗面台の上に置かれた状態となります。帰宅したらコンタクトを外してメガネをかけます。そして就寝時にメガネを外して枕元のメガネケースに入れます。

実は、枕元のメガネケースはメガネ以外にゴムひもと耳栓の保管場所でもあります。耳栓は常時メガネケースに入れっぱなしで、たまに耳栓をして寝る時だけ取り出します。旅行に行くときはこのメガネケースをそのまま持っていくことになるので、その点でも都合がいいのです。また、就寝時はメガネもゴムひもも外すので、両方を一緒に保管するのが一番合理的でした。ということは、私のメガネケースの中は、メガネ、ゴムひも、耳栓の3つが入っている場合(耳栓をせずに就寝中)、メガネ、ゴムひもの2つが入っている場合(耳栓をして就寝中)、耳栓のみが入っている場合(起きている間)の3パターンがあるということになります。

この観察結果の中でとりわけ面白いのは、やはりメガネケースの使われ方でしょう。メガネ、ゴムひも、耳栓というあまりつながりのなさそうな製品が、私にとっては就寝という行為を通して必然的にひとつのまとまりとして扱いたくなるというニーズがあるため、全部メガネケースに入れるという行動をとっているわけです。ユーザーの行動の中ではごく自然で必然性もあるこのニーズも、メガネ、メガネケース、ゴムひも、耳栓というそれぞれの製品の開発者が自ら気づくのは相当難しいことでしょう。これこそが、行動観察手法の意義と言えます。

製品の開発者は常に新しいアイデアを探しているはずですが、知らず知らずのうちに「この製品はこういうもの」という枠を作ってしまい、その枠を取っ払った発想ができなくなってしまうことが往々にしてあります。ユーザーは違います。ときに製品カテゴリーも本来の使い方も技術的制約もあっさりと無視して、好き勝手にその製品を使用します。でもそこには作り手の予想を超えた何かがある場合があります。そしてそれは画期的な製品を思いつく手がかりになるかもしれないのです。それを見つけるための手法が、エスノグラフィーや行動観察というわけです。

ちなみに、私のためにゴムひもと耳栓が収納できるメガネケースを作ってたただく必要は…特になさそうです(^^;)。

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