フルーツのユーザビリティ?
今回は完全に余興です。…が、意外と深い話かもしれません。
先日、アボカドを買ってきました。アボカドの切り方といえば、種のところまで包丁で切ってねじって、種をとって皮をむくという方法だと思います。
このときふと「アボカドって、最初からこの切り方を想定してデザインされたかのようだなあ」と思いました。種は固く、回転軸にするのにぴったりな球形ですし、皮と身は全く質感が違って手で簡単に剥がれます。これはなかなか素晴らしいユーザビリティなのではないか?!…なるほど、フルーツのユーザビリティか(^^;)。くだらないことを思いついた私は、色々なフルーツのユーザビリティについて勝手に考え始めました。
ユーザビリティを検討するためには、まず観点を決めた方がいいでしょう。
まず、大前提として生のまま食べるシーンを想定します。また、買ってきた状態または収穫した状態でそのままかぶりつけばいい、というのでは面白くないので、食べる部分と食べない部分(皮、種、スジ、ヘタなど)を分離するというのも、前提条件としましょう。その他に、食べやすいサイズに分割する場合がありますが、これは適宜必要に応じて行うものとします。
さて、この前提で、フルーツのユーザビリティが優れているとはどういうことでしょう?例えば、以下のような項目が考えられます。
- やり方自体が簡単
- 道具がいらない
- 力がいらない
- 手が汚れない
- 器がいらない
- 食べ物の形が崩れない
これ以外にも、食べかけの状態で保管しやすい、捨てるゴミが少ないなども考えられると思いますが、今回は省略します。
私が色々と思い浮かべたフルーツの中で最もユーザビリティが秀逸だと思ったのはバナナ。上記の全てに該当します。そもそも、あの細長い形状は、手で握ってくれ、そのままパクパク食べてくれと言わんばかりのアフォーダンス。バナナと似たような形状で皮をむく必要がある、例えば魚肉ソーセージと比べても、バナナの皮はむきやすいと思います(強度や保存性では完敗ですが)。
そして、日本の温州ミカン。皮のむきやすさはもとより、一口サイズに小分けされて袋に入れられている気遣いの細やかさ。手も汚れませんし、袋ごと食べようと思えば食べられるのですから、天然のオブラートのようなものです。本当に、なんであんなに人間中心設計されているのか、自然の力おそるべしです。
逆に、ユーザビリティ的にイマイチなのは、リンゴ、モモ、カキなどでしょうか。皮をむくのに刃物が必要で、技術習得が必要ですし怪我のリスクもあります。皮をむいた後は普通はお皿に入れるでしょうし、カキは食べるとき種を取り除く必要もあります。
フルーツは、昔から人間にとって都合のいいように品種改良されてきています。味や栄養価、育てやすさや収穫量など、色々な狙いの品種改良があると思いますが、種なしや皮ごと食べられるように品種改良するのは一種のUXデザインですね。
今の時代、ユーザビリティというとパソコンやWebなどのIT分野の世界、それも画面の中のことだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ハードウェアの世界にももちろんユーザビリティ的に捉えられるものがたくさんあります。
そしてフルーツの例を見ると、大きさや形状や構造、固さ、質感など、様々な要素がユーザビリティに影響を及ぼすことがよくわかります。
また、ひとことでユーザビリティと言っても実際に何かを評価するためには評価観点や軸が必要です。今回の場合は、想定するシーンと、手が汚れないなどの評価項目を明確にしました。このようなアプローチは、画面の中のユーザビリティでも必要となります。