解剖学、生理学、心理学(+感情)

作成者: hagimoto
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私は工学部系の工業デザイン学科の学生でしたが、特に大学4年から修士の2年までの3年間は、その中の人間工学研究室に所属していました。あるとき博士課程の先輩が教えてくれた、人間工学の3つのアプローチについてご紹介します。

人間そのものを研究対象とした学問には、以下の3つのアプローチがあります。人間工学は、人間の特性に基づいて製品設計をすることが目的なので、当然この3つのアプローチを包含しています。

  • 解剖学的アプローチ
  • 生理学アプローチ
  • 心理学アプローチ

解剖学アイコン

解剖学的アプローチでは、人間をメカニカルな機構を持った構造体とみなして、その特性を研究するものです。ユーザー・エクスペリエンス(UX)やユーザビリティに関連のあるところで言えば、人体寸法にあった製品サイズになっているか?ある操作を行うときに無理な姿勢を取る必要がないか?などといった課題が、解剖学的アプローチに該当するでしょう。

生理学アイコン

生理学的アプローチは、人間の機能的な側面に着目して、その特性を研究するものです。私は、学生時代には筋電図、心電図、脳波、皮膚温、直腸温、発汗量、血流量、血圧、呼気(吐き出された息)の中の酸素、二酸化炭素量などをよく測定していました。これらは、生理データと呼ばれ、生理学的アプローチにおける重要は指標となります。例えば、重たいものを持って疲れるというときに、自己申告では、疲労のレベルがはっきりしませんし、他の人と比較することも困難です。そんなとき筋電図(正確には筋電位)を測定すれば、より客観的に筋疲労が測定、比較できるのです。UXやユーザビリティの課題に対して生理学的アプローチが使うことは可能なはずですが、実際にはそのような例はあまり聞きません。

心理学アイコン

心理学的アプローチは、人間を情報処理装置とみなして、その特性を研究するものです。ユーザビリティのベースとなる認知心理学は、まさにこのアプローチです。目や耳から入ってきた刺激をどのように受容し処理し理解し対応するか。あるいは記憶し、思い出したり忘れたりするのか。このような特性は、ユーザーが製品をスムーズに使えるかどうかと密接に関係しています。

この説明は、私にとってとても腑に落ちるものでした。人間工学というわかったようでわからない領域を、より明確に捉えられた気がしました。

感情アイコン

さて、私の学生時代にはUXはおろかユーザビリティという言葉もまだ一般的ではありませんでしたが、今やUXの時代。上記の3種類のアプローチだけではUXを議論するのは少々無理があるような気がします。それは、UXでよく言われるワクワク感や魅力といった感情の要素が上記のアプローチではうまく扱えないように思えるからです。一番近いのは心理学的アプローチでしょうが、どちらかというと人間の心理活動の仕組みに主眼を置いた心理学と、主に結果としての感情の方に関心があるUXでは、少し性質が違っているようです。アートの世界での感情の捉え方に近いと言えばいいでしょうか。

というわけで、私の中では、UXの世界の切り分け方の一つとして、解剖学、生理学、心理学に感情を追加した4つを意識しています。UIもわかりにくい概念でしたが、UXはさらに曖昧模糊としています。製品とユーザーの関係を見ていくと、UIやユーザビリティからUXへと広がっていくのは必然だと思いますが、何もかもごちゃまぜにしてUXと捉えてしまうと、他の人との共通認識も持てず、原因を探ることも対策を講じることも難しくなってしまうでしょう。そうならないためには、結局UXに含まれる個々の概念をしっかり意識し理解することが重要だと思います。

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